現役金融マンM氏の金融・投資本研究

投資に関する情報・書籍の感想を発信しています。投資に関する書籍は著者によってスタイルは様々です、私のブログがきっかけで本を読み、独自の投資スタイルを学ぶきっかけになればと思い始めました。

日々の投資手法研究53 #新円切り替え #ハイパーインフレ

(核心)令和財政 大戦時より深刻 上級論説委員 大林尚 :日本経済新聞

 

記事のポイント

①1991年5月に日経平均は25000円台、当時の首相宮沢喜一氏は大手銀行に不良債権処理目的で公的資金を注入するかどうか検討していた

②しかし、当の銀行に危機感がなかったことやコスト負担問題、危機が起こっていない段階での投入は支持が得られず断念

③結果として危機がおこり、1992年から10年間で90兆円以上が必要とされた

④1890年以降の国家の債務規模をGDPと比較すると大戦末期にGDPの2倍になったが今は2.2倍

⑤当時は大戦の戦費負担だったが、現在は社会保障費が大きい

⑥最終的に敗戦後は超インフレ、新円切り替えなど財産が大きく毀損する結果になった

感想

第一印象として消費税増税を行うかどうかでもめているときなので、増税するほうがいいと考えている人が意見を書いたのかな?と疑いはしました。

また、戦後のことを補足するとインフレと旧円と新円の切り替えは事実ですが、同時に財産税という一度限りの事実上の財産没収が行われたことは書いてないです。

なぜ書かなかったのか、財務省にとって言いたくない歴史なのかもしれません。

 

少し反論めいた書き方になりますが、当時と今とでは状況が違いすぎます

当時は敗戦直後で外国からの信用力が地に落ちていた時で海外資産も没収された状態です。

信用力のないところに戦費調達の膨大な債務の残りがあり、戦後復興の為に資金がいる、復員で人口が増大する、海外植民地が無くなり、資源輸入が出来ないなどを考えると物資不足でインフレは当然です。

当時の為替レートは戦前に1ドル4-5円程度だったのが300円を超えたわけで輸入物価の上昇は明確でした。

 

一方で、現在日本は世界最大の債権国であり、海外に企業の進出も目覚ましい状況です。

また、個人金融資産も1800兆円あり、今すぐ信用状態が戦後と同じになるとは思えません。

もちろん膨らむ債務を放っておいてよいというつもりはないですが、戦後と単純に債務のGDP比率だけをあげて、大変だと書くのは日経新聞にしては短絡的な気がしてしまいます。

警戒すべきは極端ではなくても為替の円安やインフレへの備えだと思います。

記事の中では戦後の円切り替え時に財産を守った資産についても書かれてはいません。

農地解放や財産税については国家の財産に対する介入なので日本人である以上対策が厳しいですが、インフレから守ったり、円切り替えから守られた資産というと、不動産、株式、外貨、金などがあげられます。つまり、お金以外の価値ある資産です。

株式は1950年から東証再開となってますが、株券を直接取引所に持ち込んで相対で取引することは行われていました。

私が驚いたのが、東証が閉鎖されたのが1945年の8月6日で、相対取引で再開されたのが終戦直後の8月27日だったそうで、当時の証券会社の人々や日本人の底力を感じます。

現在は貨幣管理は中央銀行の管理が強く、むしろ第4次産業革命の影響でデフレ傾向です、こんな時に引き締めと同義の増税を「財政赤字が大変だから」と言って行うと景気に甚大な影響が出てしまいます。

むしろ、今は借金の額は気にせず積極的に財政出動を行わないといけない時期だと考えます。

また、個人としては国家は政策の失敗の責任を「戦争」であっても「インフレ」であっても取らないので資産を分散して変動に備えることが大切だと考えます。

平成のデフレ時代は銀行預金、円での日本国債が最強でした。

つまり、今、日本人の個人金融資産が6割が運用されていない状態なのは正しい行動だったわけです。

しかし、アベノミクスはインフレ政策です。

年金を管理するGPIFも資産を日本株式や外国株式を中心とした運用を始めました

そろそろ本格的に運用を行い、せめて年率2-3%程度の財産の成長が見込まれる物に投資を考えないと10年後に見かけの数字は同じでも価値は7-80%に減ってしまうことになりかねません。

そんな時に歴史を知らない、販売だけが目的の金融機関が殆どの状況は不幸ですが、気にせず、国際分散投資のコストの安い世界株式インデックスやTOPIXETF、外国債券などをバランスよく保有する運用を自分で組むことが必要だと考えます。