現役金融マンM氏の金融・投資本研究

投資に関する情報・書籍の感想を発信しています。投資に関する書籍は著者によってスタイルは様々です、私のブログがきっかけで本を読み、独自の投資スタイルを学ぶきっかけになればと思い始めました。

日々の投資手法研究65 #地方銀行 #フィンテック

地銀再編、10年で集中支援 成長戦略案 法改正20年めど 70歳雇用、努力義務化 :日本経済新聞

記事で一番気になったところが

「金融とIT(情報技術)を融合したフィンテックでは、銀行以外の企業の参入を想定する。ネット通販サービスの決済などの一環で、現状より多くの金額の送金を手がけられるようにする。」

のところです。

現在株式市場で地方銀行で上場している企業は78社あります。

時価総額四季報オンラインで検索したところ、最大はコンコルディアHDの5200億円がありますが、1000億円未満にすると54件に減り、500億円未満にすると35件、100億円未満だと8件となります。

ここで気になるのが地方銀行の編成は金融庁が認めるかどうかなので実際は簡単に買収できませんが、8件の時価総額100億円未満の地方銀行です。

銘柄コード 銘柄名 時価総額(億円) PBR 配当利回り(%) ROE(%) 従業員数 資金量(億円)
7150 島根銀行 40 0.22 2.76 2.1 376 3700
8416 高知銀行 76 0.13 3.4 1.4 866 9660
8540 福岡中央銀行 95 0.33 1.43 1.7 481 4872
8554 南日本銀行 94 0.34 4.2 1.8 681 7601
8559 豊和銀行 40 1.08 1.4 3.6 534 5421
8560 宮崎太陽銀行 70 0.21 3.8 2.3 641 6499
8562 福島銀行 62 0.21 0.76 1.9 522 6907
8563 大東銀行 74 0.18 5.13 3 547 7633
合計、平均   551 0.3375 2.86 2.225 4648 52293

これでみると、8行で551億円の時価総額なのに資金量は5.2兆円とかなりボリュームがあることがわかります。

もちろん最大手の三菱UFJは220兆円、三井住友131兆円、みずほ135兆円なのでメガバンクと比較したら規模が違いすぎますが、世界相手の銀行と地方の銀行では役割が違います。

個人周りだったり、中小企業の支援だったりと我々にも身近なところでかつて稼いできた銀行です。

それが、ROE2%程度と低迷しているのはマイナス金利政策の影響で総資金利ザヤが0.1-0.3%程度に落ち込み、本業が消滅した中、投資信託や保険販売などでしのいできたからです。

しかし、新しい動きもあります。

9928ミロク情報サービス 経営課題を解決するクラウドサービス立ち上げ

とか、2019年5月29日の日経産業新聞の記事ですが

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO45378850Y9A520C1X11000/

中小へ融資、AI審査

クラウド会計ソフトで蓄積した銀行などの明細データを人工知能(AI)に学習させ、企業の与信を審査する。銀行からの借り入れが難しかったり、審査に時間がかかったりする中小企業が迅速に運転資金を確保できるようにした

とあります。

この企業は3994マネーフォワードです

今の報道は既存の銀行VS新興企業の書き方が多いです。

それだと、新しい企業はシステムも新しく、人件費も少ないのでコストが安くサービスを提供できるので有利です。

既存の銀行は金利が低くなった上に地方の衰退で貸先が減り、余った預金を有価証券投資に回したり、行員を使って投資信託販売などに乗り出しましたが、有価証券の損失が目立ったり、投資信託手数料の低減の波が押し寄せ、困っています。

このままだと・・・という論調なのですが、ここは単純に規模を大きくすればいいというものでもないと思います。

今までのやり方なら統合して重複店舗を削減し、人員削減を行えば利益が出ました。

しかし、現在メガバンクでさえローンの貸し出しに困っており、海外でなんとか収益を上げている状況なので合併してスリム化したところで同じことの繰り返しになってしまい、日本の銀行はほとんどなくなってしまうと思います。

また、統合は店舗の減少を招くので、人と人でつながっていた担当者と顧客の関係も地方銀行はきめ細やかにやっていただけに切れてしまうリスクもあります。

統合しても効果が出ない恐れすらあります。

そこで新興企業が既存銀行を買収するとか合併するという所が出てもいいと思います

金融庁も考えを変えてもいいのではと思います。

ちなみに記事に出した3994マネーフォワードの時価総額は810億円で8行合計を上回ります。

9928ミロク情報サービスも1160億円と8行全てを2回買える時価総額です。

新興企業はシステムやサービスは素晴らしくても顧客基盤がありません。

既存企業は全く逆で顧客基盤を生かせてません。

マネーフォワードのような銀行が貸せない先を貸せるようにするシステムを地方銀行の蓄積された顧客データと結びつければもっと資金需要を掘り起こせる可能性が出てくると思われます。

また、往々にして地方銀行は地方官僚的な組織文化なので新規事業など目に見えないことに対してわかろうとする感覚がないため目に見える不動産などにしか価値を見出してこなかったことが資金需要の減退をおこし、現在の苦境を招いています。

しかし、地方であっても新しいサービスや事業を起こせる余地はたくさんありますし、新興企業と組むことによって違う角度からの企業掘り起こし、起業支援はできると思います。

最近のインバウンド消費などよい例です、東京や大阪から人が来て会社を設立しているケースも多く、それでは地元金融機関には恩恵は余りありません。

地方発の企業を起こし、支援する体制をとってもらいたいものです。

規模拡大もいいですが、プライドを捨てて、新興企業の傘下に入り、データを生かすことで業績を改善できる余地に早く気付いてほしいです。

そうなると、資金量5兆円で時価総額がたった550億円なんてとんでもない数字にはならないと思います。

規制が多い業種ですが、少し変わるだけでお宝銘柄になれる可能性に気付いてほしいものです。