現役金融マンM氏の金融・投資本研究

投資に関する情報・書籍の感想を発信しています。投資に関する書籍は著者によってスタイルは様々です、私のブログがきっかけで本を読み、独自の投資スタイルを学ぶきっかけになればと思い始めました。

6冊目「海外ETFとREITで始めるインカムゲイン投資の教科書」玉川陽介/日本実業出版社

 

現役金融マンMです。

書籍6冊目は「海外ETFとREITで始めるインカムゲイン投資の教科書」です。

こんなことできて生活できたらいいななんて思って読んでみようと思いました。

 

著者紹介

玉川陽介さん コアプラス・アンド・アーキテクチャーズ代表 1978年生まれ

大学在学中に統計データ処理受託の会社を設立、のち売却。その資金をもとに国内外で不動産投資と証券投資を幅広く行ってらっしゃるそうです。

 

全体は序章と、第1部から5部、終章まであります。

その中でチャプターは8つ、債券講座6つ、コラム3つと多岐に分かれていますのでここではすべての項目を載せることは割愛させていただきます。

  

はじめに 

序章  安定・高利回りは正しい知識から

第1部 10分でわかる!サブプライム危機から米国緩和縮小までの流れ

第2部 債券

第3部 為替

第4部 REIT(不動産投資信託

第5部 海外証券口座

終章 長期の国際分散投資は本当に正しい投資法か

 

第一部は2008年ごろのサブプライム危機以降の日米の経済、金融の流れや金融緩和の仕組みなどについて解説されています。

第2部は債券についてです。

日本人でも海外ETFを活用して利回りを高めようとの趣旨で数多くのETFが紹介されています。個人でもすぐに活用できそうなETFも紹介されており、いくつか代表的なのをここで紹介いたします。

iシェアーズ 米国国債7-10年ETF(ティッカーIEF)

残存7-10年の米国債保有するETF

時価総額131億ドル/12か月分配利回り2.32%/経費率0.15%

iシェアーズ J.Pモルガン・米ドル建てエマージング・マーケット債券ETF(EMB)

米ドル建てで新興国が発行している国債保有

時価総額170億ドル/12か月分配利回り5.39%/経費率0.39%

iシェアーズ iBoxx米ドル建て投資適格社債ETF

時価総額320億ドル/12か月分配利回り3.6%/経費率0.15%(LQD)

格付けの高い米国企業の社債に投資する

iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債ETF(HYG)

時価総額146億ドル/12か月分配利回り5.32%/経費率0.49%

米国の低格付け企業の社債に投資する

iシェアーズ 米国優先株式ETF(PFF)

時価総額146億ドル/12か月分配利回り5.91%/経費率0.46%

海外大手銀行の優先出資証券・ハイブリッド証券に投資する

また、本書では米ドル建て、ユーロ建ての偶発転換社債も紹介されております。

金融機関の自己資本比率が一定率以下になると強制的に元本を金融機関の株式に転換されてしまう債券です。

その他、日本の金融機関では購入できないが利回りは非常に高いETFも紹介されています。

 

また、債券や利回り商品の投資するときの視点として

外貨建て投資の時はそれぞれの国の国債との利回りを比較してみる。

例 トルコリラで12%の不動産投資→トルコ本国の国債の利回りが10%

実際は2%になるので、たいしていい取引ではないと判断できる。

この考えを常に持つと金利の高い安いに騙されない

また、投資時の元本が保証されているようなファンド(例:豪ドル建て元本確保型ファンド)は、もし運用成果が上がらない場合は要した期間で本来得られた利息を失っているという見方で見て判断するべきとしています。

その他太陽光発電については

一見利回りが高いが、20年たつと設備を撤去して土地を返さないといけない、借地でなくても旧式の設備にメンテナンス費用を払い続けるわけなのでそれらの費用をさしひいた利回りで考えないといけない。最終元本が0になって戻ってくる債券投資と言える。ただ、案件によってはレバレッジ(借入)をかけてやるならば妙味はあるとしています。

最近はやりのオフショア積立保険は手数料のカタマリだから購入には値しないと書いてます。

 

第3部 為替についてですが、相場の見方や指標のチェックなどが書かれていますが、

投資する観点で注目したいのはフォワード為替レートという考え方です。

「30年後に1米ドル70円で買える仕組み債はお得か」の項目で紹介されています。

例 100万円を70円換算で14,300米ドル、30年後に購入。

途中は利息を受け取れる仕組みになっていて、もし、満期時に70円よりも円安ならば得をする。

ただ、ここでも、米国の30年債利回りが3.4%(当時)なのでこれを複利計算すると2.72万ドルまで増えるはずなのでその金額と比較して投資をする必要があるとしています。

これを為替にあてはめると36円くらいまでの円高水準で交換しないと割に合わない計算になります。

為替系仕組債はこのフォワードレートで出てきた為替と満期時の交換為替を違う水準に設定することで差が生まれますのでその差を利息収入として顧客に渡して手数料も中で抜いている取引を行っています。

その他の投資では

FXについては業者をきちんと選ばないといけない注意点、

銀行の外貨預金は交換手数料や表示をきちんと見ないといけない点、

仕組み預金は途中で解約がしにくいのと、途中で償還されてしまった場合は次に再投資する金融商品は外部環境的にない可能性が高いことに注意

為替が下がると外貨で償還される仕組み預金は外貨償還の場合は時価よりも不利な価格で外貨を購入しないといけないリスクがある。

デュアルカレンシー預金は高い為替のリスクを負う割にはリターンが少ない。

システムトレードと月利2%のFXファンドは注意点が何点か書かれており、守らないと詐欺にあう可能性も高いとしています。

第4部 REIT(不動産投資信託)については

①解散価値のNAV(Net Asset Value)に着目し、純資産の何倍まで買われているかをチェック

②賃料から経費を引いた収入のNOI(Net Oprerating Income)を不動産取得価額でわってNOI利回りでもチェックする必要があるとしています。

紹介されているETFはありましたが、日本でも取り扱いはありませんでした。

(VNQ米国市場のREIT全体への投資をしているETFが紹介されていました。)

個別銘柄でARCP、NLYの紹介(米国の個別REITの銘柄コード)

③国内の米国REITの投信の過剰な分配には注意することと書いてました。

新興国に投資をする際にも利回りばかりに着目するのではなく、インフレ率も加味したレートで見ないといけないとしています。

また、楽天SBIで購入できない商品や取引形態を求める場合は海外のIB証券を紹介しています。

ここならば保有財産にレバレッジをかけた取引や、米ドルを借りて米ドルで投資ができ、為替リスクをない状態で投資を行うこともできます。

ただ、全て英語なのと、税金も申告しないといけない手間はかかります。

また、値動きを正しく把握して99%安全な投資を考えるでは

ヒストリカルボラティリティという統計の表を使い99%発生しないはずの暴落が起きた際の損失額をあらかじめ分かったうえで投資を行うこと、リスク管理について述べています。

国際分散投資への誤解では

各人の考え方によってポートフォリオが変わる点をあげ、完全に良いとは言えない

市場構造の変化に対応した長期投資をでは

1950年以降世界全体のGDPは一度もマイナスになっていないという統計データが根拠になっており、今後もそうなのかはわからないのが難点と書いてます。

よって結論としてインカム収入がきちんと読める投資を中心に据えるべきとして本書を締めくくっています。

 

感想

まず、読んでみて、作者の玉川さんは学生時代に起業して会社を売却した資金を元手に幅広く投資を行っているそうです。

ならば、私は元手を作るところか始めないといけません(泣)

ただ、資産家の運用スタイルとして非常に共感できるポイントが多かったです。

非常に詳しく金融商品を分析なさっているし、単純に利回りが高いから投資をするといったスタイルではないので負けにくい投資だと思います。

特に、①外貨の投資は投資先のインフレ率、国債の利回りからみて判断する点。

②外貨建て仕組み債は米ドル対象ならば満期までの同じ期間の米国債との最終利回りと比べてどうなのかを比較。

③幅広くコストの安いETFを活用する点。などは投資をする人も投資を案内する人からも必要な視点です。

いくつかこの本からの注意点を申し上げると

かなり上級者向け運用スタイルの紹介であることだということです。

例えば、紹介があった偶発転換社債は一言、「金融機関の自己資本比率が一定以下になった場合株式で転換されてしまうリスク」と書かれているだけですが、事実ですが、銘柄によって条件は異なります。また、株式に転換される株価は発行時に決められていて、自己資本比率が条件以下になった時というのは事実上倒産寸前なので株価は決められた株価をはるかに下回る可能性があり、時価が低いのにそれより高い価格で大量に株を買わされるリスクを抱えながらの高い利回りということになります。

それを判断したうえでの投資となると初級者は避けたほうがいいと思います。

また、国内証券会社の場合、レバレッジをかけた取引は基本的に禁止なので海外の証券会社を利用するとありますが、これもかなりレベルの高い取引です。

しかし、ここまで出来たら不動産に借入金を活用すると同じく金融商品に借入金を活用するので高利回りで運用ができます。

最後の国際分散投資と長期投資についての考え方ですが、これは人によって判断が分かれると思います。

著者は分散しても「どのくらい効果が出るか不透明」、長期保有でも「外部環境が未来も成長するというわけではない」という考え方と解釈しました。

「分散して長期保有すれば自然ともうかる」考えの方は未来に楽観的であることが確かに必要です。

しかし、どんな楽観的な人でも購入直後にリーマンショックが来て、資産が半分になってしまっては耐えられない人が大半です。

そこで、本書にあるように99%の確率で起こりえない事故があった時の損失率を勘案して投資を行うわけですが、もしかするとその結果は非常に低い利回りかもしれません。分散しすぎて低い利回りで満足できれば良いですが、そうでない場合は色々と相場を見て判断する必要が出てきます。

利回りの高い商品をリスクを十分理解しながらある程度集中投資しないと利益は上がらないことになります。

今の自分の資産について、どの部分をハイリスクにするか、ローリスクにするか、どの位の利回りが欲しいか、損失に耐えられる率はどのくらいかをよく判断してから組み合わせを考える必要があると思います。

投資家も目先の利回りだけで判断しないこと、販売側も利回りの数字だけで売り込まないことの大切さを改めて感じさせてくれる書籍でした。