5冊目ウォール街のランダム・ウォーカー原著第11版バートン・マルキール/日本経済新聞社
ウォール街のランダム・ウォーカー原著第11版バートン・マルキール/日本経済新聞社です。
全体が4部、15章構成になっていてかなり量が多い本です。
1973年に第1版が発行され、4年に一度のペースで加筆、修正され、現在に至ります。今回で11版です。
著者紹介 バートン・マルキール
1932年生まれ。現在はプリンストン大学名誉教授。投信会社バンガード・グループの社外重役やアメリカン証券取引所理事なども歴任。
訳者 井出・正介
1942年生まれ。現在㈱クレスコ取締役監査等委員。野村総研出身。
本書の一番重要なメッセージは
「個々の株式の売買や投資信託を買うよりインデックスファンドを買ってじっと持っているほうがはるかに良い結果を生む」です。
投資手法としてはインデックスファンドのバイ&ホールドです。
インデックス投資の元祖の本ということになります。
まえがきでは、1969年はじめに1万ドルでS&P500インデックス・ファンドを購入したAさんは全ての配当収入も機械的に再投資して、2014年半ばまで持ち続けた場合、73万6196ドルに増えた。ファンドマネージャーが運用する株式投資信託の平均を買って持ち続けた場合50万1470ドルだった。
と紹介して、インデックス投資のほうが専門家に任せるよりも成績がいいと結果を示しています。もっというとチンパンジーと専門家で大差はないとまで書いてます。1977年から1990年までピーター・リンチに率いられた「マゼラン・ファンド」だけは例外的に好成績が続いてますが、彼は今は引退しています。
本全体では、
①アナリストやチャーチストなど専門家と言われる人々の体たらくについてや、
②1634年のチューリップバブルから現在までの10個以上の世界各地のひどいバブルの発生と過熱、終わり方やその中で証券会社や投資家はどう考えてどう動いたか、
③現代ポートフォリオ理論などリスクを分散させる理論の紹介や証明
④具体的に運用で生かす方策
などが書かれています。
①については「アナリストの利益予想と、ここ数年の利益を延長しただけの予想はたいして変わりない」とか、「テクニカルアナリストと呼ばれる人で成功した人を、私は見たことがない」
②のバブルについては、証券会社は株価が上がりすぎると「新しい投資尺度を持ち出して無理やり割安だ」ということがあるので警戒したほうがいい
周りに左右されて、「熱くなってガンガン行ってしまうタイプが負け続ける
」として常に冷静になる大切さが書かれています。
また、個別株式の選び方が紹介されていて、
第一のルール 利益成長率が今後5年以上にわたって市場平均以上の銘柄を買うこと
第二のルール 株価がファンダメンタル価値以上になっている銘柄には手を出すな(PERが高い銘柄は期待を外した時の下落幅が大きい)
マゼランファンドを運用していたピーター・リンチはPEG比率を用いて成功した。
例えば50%の利益成長可能性に対して25倍の株価収益率(PER)ならば0.5倍
20%の利益成長可能性に対して20倍の株価収益率(PER)ならば1倍
それならば0.5倍を選んでいた。
成長が期待でき、かつ低いPER銘柄を探そう。成長が織り込み済みの高PER株には気を付けよう。
第三のルール
投資家が砂上の楼閣を作れるようなストーリーが描ける銘柄を探そう
あなたが購入した銘柄についてのストーリーが人々の心をつかめそうかどうか、まず自問せよ。
「利益の成長率が高く、利益の成長が持続されている実績があって、わくわくさせてくれるような成長シナリオが描けそうな株でPEG比率が低い(はっきりした定義はないですが1倍以内なら割安といわれています)株」ということになります。PEG比率の利益に日本だと営業利益を使うのか経常利益を使うのかははっきりしませんが、最終的に判断をするときに使うといいと思います。
③の理論としては最も著者が信頼してそうなのが現代ポートフォリオ理論と行動ファイナンス理論でした。
現代ポートフォリオ理論とは1990年にノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコビッツが1950年代に始めた学問で分散投資の有効性について訴えています。「ひとつのかごにすべての卵を盛るな」なんて言葉もよく使われています。
行動ファイナンス理論とは投資家は常に非合理に動くもので1.自信過剰2.偏った判断3.群れの心理4.損失回避願望が強いのが原因だと書いてあります。
株を購入した後に自分だけは儲かると信じていて、ぼろぼろになってても負けを認めたくないから売らないでどんどん損してゆく・・・みたいなもんです。
④は具体的には
第12章に財産の健康管理のための10か条が紹介されています。
1.元手を蓄えよ
2.現金と保険で万一に備えよ
3.現預金でもインフレヘッジ
4.節税対策と年金制度の活用
5.運用目標をはっきりさせる
6.マイホームの活用
7.債券市場に注目
8.金・ダイヤ・書画骨董・コレクターアイテム
9.投資にかかるコストに目を配る
10.分散投資が大原則
特に私なりに運用で注意したいのは
5.運用目標をはっきりさせる7.債券市場に注目9.投資にかかるコストに目を配る10.分散投資が大原則
です。目標が決まらないとどんな商品で運用するかが決まらないのでポートフォリオがあやふやになります。
債券は株式が下がった時の逃げ込み先なのでバランスをとるために合わせたほうがいいです。
比率は100-自分の年齢を株式、残りを債券や不動産で分散するのがいいと書かれています。たとえば30歳なら70%株式、60歳なら40%株式といった割合です。
コストは日本の投資家はもっと気にしないといけないと思います。
投資の仕方は出来るだけ積立方式でドル・コスト平均法(時間分散)にしたほうがいい。
感想
本書はとても量が多いためもっと伝えたい面白いところが多かったのですが、一番投資に関わる部分にフォーカスして書きました。
この本に言わせると世の中の金融機関とマスコミは不要ということになります。
でたらめだらけの予想屋とチャート分析家がTV等で人々をあおり、証券会社が売買手数料で儲かる仕組みを増殖させているイメージプンプンに書いている本でした。
そこまで酷くないと思いたくもなりますが・・・
個別株式の選び方は利益成長と持続性が高くPEG比率が低いものなので、私も選んでみます。あとは選んだ銘柄が砂上の楼閣を作ってくれるかをよく考えます。
また、財産の主要な部分はインデックスで資産を分散させてじっくり持つというのも頷けます。私も財産の主軸は世界株インデックスファンドの積み立てをやってますので。
主軸でこの本の考え方を実践して、余裕部分で株式投資を楽しむのがいいかもしれません。