No.20 #お金の教養 #泉正人 #だいわ文庫
今回は少し株式やインデックス投資から離れてお金の講義本です。
著者紹介
泉正人さん
日本ファイナンシャルアカデミー代表。金融学習協会理事長。神戸夙川学院大学客員教授。ファイナンシャルアカデミーを2002年に設立。10年間で20万人を超える人々を教えるスクールに成長させる。
とお金に関する教育事業に携わる方です。
この書籍はファイナンシャルアカデミーの講義を受けるときに配られる本でもあるそうです。
目次
はじめに
第1章 お金についての考え方
第2章 お金の貯め方
第3章 お金の使い方(小さなお金編)
第3章 お金の使い方(大きなお金編)
第4章 お金の稼ぎ方
第5章 お金の増やし方
第6章 お金の維持管理
第7章 お金を与えること
おわりに
となっています。
本書の一部紹介と印象に残った個所
私も金融機関で運用について話すことは多いものの、お客様は事業家であったり、不動産オーナーであったりと資産がある方に話をするところからスタートするのでお金に関してどの様に付き合うか、どのように貯めるのかというポイントが抜けているのではないかと感じて読みました。
特に印象的な個所を抜き出して紹介いたします。
まず、「はじめに」では、お金に関する一般的に皆が持つ不安が列挙されています。
泉さんも就職直後に年収が200万円で苦労していたところ、転職後に400万円に増え、身の丈を超える生活をしてしまったがために親から借りてついには親からの資金援助も途絶えることを経験されているそうです。
そこで「お金の教養」を身に付けなければならない!と強く感じて勉強スタートされたそうです。
第1章では収入と支出について考え方が書かれています。
特に印象的なのが「年収3000万円でもなぜかお金が貯まらない本当の理由」にある
「お金を稼ぐ能力と、お金を維持管理する能力は、全く別の能力です。」
という一文です。
確かに・・・と自分に置き換えると、年収が上がったら上がった以上に使ってきた記憶がよみがえります。
独身時代は給料日前は大体厳しく、まとまったお金が入ると大きな車を購入したりしていました。
お金の維持管理する能力・・・もっと早く気づいていればと思います。
いくら稼いでも稼いだと同じかそれ以上の金額を使えば単純に無くなりますよね。
また、これらお金に関する学習をする上で
「お金は汚い」という幻想を取り払おう
とあり、日本にありがちなお金は不浄であるという考えを取り払って学ぶことの大切さを教えています。
これは私も金融機関にいて感じることです。
「お金は汚い」「お金は魔物」「お金を考えることは意地汚い」「汗水たらして稼ぐのが本当でお金がお金を産んだ結果の利益は不要なもの」と今まで色々な投資をしている方と接している私でも沢山聞いてきました。
しかし、ならば本当に明日から全くお金が無くなってもいいのか?と言うと皆さん困ると思います。
お金は確かに所詮「交換手段」であり、使わないで家に置いておくだけならば何の役にも立ちません。また、お金を稼ぐことだけが人生の目的になるのも私はどうかな?と思っています。
しかし、基本的なお金のこともわからずに遠ざけている姿は、理解できないことを理解しようとしない逃げに見えますし、ずる賢い人に簡単に騙されてしまう原因の一つにもなっています。
幻想は不要です。
第2章のお金の貯め方 では収入の2割を貯めるなど、仕組みを作ることを訴えています。
ここでも印象的なのが「貯蓄へのマイナスイメージを払拭する」です。
安心材料を持つために貯蓄をすることがため込んでいるマイナスイメージで捉えるのが日本人の悪い癖で、これも意識を変える必要があると説いています。
江戸っ子は宵越しの金は持たねぇ!なんて言っていると老後困ります。
第3章お金の使い方(小さなお金編)
では何が「浪費」で何が「投資」か考えようとあり、普段使うお金を何も考えないで使うのではなく、
払う以上価値があるものは「投資」、同等を「消費」、払う以下の価値のものを「浪費」と分ける考え方を紹介しています。
また、お金だけでなく、時間も同様でこれを気を付けているだけでお金も時間も豊かなものに変わるとしています。
第3章お金の使い方(大きなお金編)
ここでは一番考えさせられたのがマイホームを買うのか、賃貸なのかの基準です。
2つの基準が示されています。
①物件価格は家賃の200倍以内か
②30年後でも資産価値があるか
これはマイホームを不動産の利回り、つまり、貸し手から見た基準です。
確かに不動産投資を行う場合は利回り〇%と考えますが、マイホームや賃貸で自分が借りる時はスコンと抜けます。
月家賃の200倍というのは利回り6%の基準で、不動産投資を行う際にこの程度は欲しいという利回りで逆算した結果です。
と、なると今の日本の割と便利な所のマンションや住宅は少し割高な気がします。
また、これに加えて30年後も資産価値がどのくらい残りそうかを考えて2つの基準を合わせて購入するかどうかを検討するというわけです。
つまり、30年後に5000万円で購入したマンションが3750万円の価値が残っているならば5000万円の支払い終了後に1250万円のコストで手に入れたと同義で、月に直す3.4万円しか住むのに払っていないことになります。
一方で安いからと言って4000万円で購入し、30年後に1480万円に価値が低下していたら2520万円のコストを支払っており、毎月7万円のコストを払うことになり、価格が安いにも関わらず、実際の支払いは高いという結果になってしまう考え方です。
中々30年後の資産価値がいくら?と想像することは難しそうですが、買うべきか、買わざるべきかの判断として重要です。
そう考えると、私の過去のお客様で不動産を利回りが第一ですが、次に資産価値を想像した上で利回りが妥当かどうか考え、決して高くない利回りの物件を購入する方も多かったです。
しっかりと知識が身についているため自然とこの2つの判断ができるようになっていたのだと思われます。
第5章に飛びますが、「お金の増やし方 」についても書かれています。
しっかりと経済を学び、世の中のうねりを感じ、リスクをとった上で行う資産運用だけが、私たちの助けになってくれるのです。
という一文は完全に同じことを考えてます。
すぐ何が儲かるか、と手っ取り早く教えてくれそうな情報を買ってばかりいる人はまったく儲かりません。世の中は情報は買うより売る人が儲かるようにできていると私は思ってます。
本当のリスクは自分自身にある とも書かれており、投資をするスキルがないのに投資を行うのは運転技術がないのにいきなりF1レーサーの車を運転するようなものであるとかかれております。
第6章でとても印象的なのはお金を増やすステップが図で明確に書かれているところでした。
1.収入以上のお金を使わない
2.収入の二割を貯金する
3.収入の二割を自己投資に充てる
4.収入を増やす
5.運用でお金に働いてもらう
6.お金を正しく維持管理する
とこのステップを踏むことで不安のない生活を送れるとあり、よく読んでみるとほんとに普通のことなんですが、実際にできているのか?と考えるとできていない人が多いような気がします。
これらの知識を一つ一つ教えるために泉さんはファイナンシャルアカデミーを創業なさったそうです。
まとめ
本に書いてある一つ一つはとても基本的なことです。
しかし、これらを体系だって教えてくれる書籍や場所は非常に世の中に少ないです。
また、お金のことを相談すると謳っている場所が実は金融商品を売りつけるための場所であったり、およそ役に立たない知識を高いお金で売りつける場所だったりすることが多いのが実態です。
今までは日本はまだ昭和の終わり位から平成の半ばくらいまでは余裕があったように思えます。
しかし、平成の後半は若い人は収入が減り、海外との所得差が目立つようになりました。
最近海外の人が日本にたくさんやってきて「爆買い」なんて言葉も出てきました。
これ自体が悪いことではないし、日本の魅力を感じてやってきてくれている人も数多くいます。が、日本が中国や韓国等アジアの諸外国に比べて物価が安くなってきたりしていることも大きな原因です。
昔は日本人が海外で安いからといって物を買いに出ることが多かったですが、もはや海外の人から見て安い買い物ができる国と立場が逆転しています。
これら全てお金について運用で海外の成長を取り込んだりして増やす努力をしなかったことにあると思います。
運用成果と労働の対価の賃金に差はありません、運用成果も成果を得るための努力あってのことです。
金融知識を身につけないでお金を働かせていないということは「なまけている人」だと考えます。
それを気づかせてくれる本だと感じました。