現役金融マンM氏の金融・投資本研究

投資に関する情報・書籍の感想を発信しています。投資に関する書籍は著者によってスタイルは様々です、私のブログがきっかけで本を読み、独自の投資スタイルを学ぶきっかけになればと思い始めました。

日々の投資手法研究57 #銀行 #運用 

 

記事紹介

 

銀行、リスク運用に走る 外債買越額8年ぶり高水準 投信・REIT、5年で3倍に 超低金利 貸し出し不振続く :日本経済新聞

①日本の銀行が預金で運用する姿勢を強めている

②外債投資は買い越し額が2018年は6.6兆円と8年ぶりの大きさ

三菱UFJFGはグループで21.5兆円、三井住友FGは9兆円保有

③株式や外債などで運用する投資信託は2月末で全体で18.5兆円保有

④不動産REITは2.4兆円保有

市場の動きによっては大きな損失リスクを抱えながらの運用が続く

 

感想

 

金融機関の行き場のない資金が運用に回っている実態が書かれてます。

投信保有残高は2013年3月に5兆円程度だったのが2019年2月に18兆円を超える

水準までになっています。

考えられる背景

 

①貸出需要が無い、もしくは掘り起こせていない

②高齢化を迎えて消費が抑制されている中預金は増え続けている

③異次元緩和の長期化により貸出金利が大幅に低下、貸倒を恐れると融資がしにくい

④運用面でも10年国債の利回りがマイナスとなるなど、安全資産の運用先が減っている

結果銀行が大量に行き場のない預金を抱え込む形となり、外債、投信、REIT等への大量運用の結果になっていると考えられます。

また、銀行は本業の貸出で利益を上げられないので貸出に積極的ではなく、預金を減らすためにリスク性資産を個人や企業に販売する証券会社化がどんどん進行しており、貸出を行ったことのない銀行員も大量にいる状況です。

 

今後の想定される状況

 

今後ですが、考えられることや対策ですが、大手都銀と国内銀行で別れると思われます。

大手都銀に関しては国内業務の縮小、証券会社化の推進、海外業務への積極進出が考えられます。

ただ、これにも課題はあって証券会社自体が野村證券の苦境に代表されるように対面型の証券会社が今までの「金融商品販売会社」だけでは生き残れない状況にあり、手数料をネットより高くとるためには「資産運用コンサルティング会社」への脱皮に向け社員の再教育が必要です。

海外については海外で日本企業はいざ知らず、海外企業が相手となると、ドル資金を大量に保有する必要がありますが、邦銀は円預金を大量に保有していて、これを米ドルに換えて米ドルを調達する必要があります。

為替リスクをどんどん取ってよいわけではないので為替ヘッジを行いますが、日米金利差がある分コストはかかります。よって米銀に比べると利幅が薄くなってしまいます。

国内専業の銀行はもっと深刻です。

まず、地方になると、過疎化が加速しているため新しい企業が伸びない現実があります。よって貸出先が無いため結果としてスルガ銀行事件のように不動産融資にのめりこむ銀行も出てしまいます。

また、証券会社化についても預金者自体が高齢者の場合が多く、これは証券会社の職員でも対応についてはコンプライアンス面などでも高度な対応が求められます。

今までやってなかった所からいきなり高度な知識や対応の所に職員が飛び込まされるわけです。

会社四季報を見ていると、殆どの銀行がコメント欄に、投信販売手数料、保険販売手数料、運用成績、カードローンなどおよそ企業の事業融資と関係ない分野の成績が業績を左右している実態が目立ちます。

 

個人的に考えた解決策

考えられるのは、

①新興のフィンテック企業と組んで過去の蓄積した顧客データをもとに詳細な顧客企業の分析を行い、必要なところにもっとリスクを取って融資を行う。

②地元のベンチャーと組んで新しい産業を興す

で貸出を少しでも増やせるよう努力する一方で

③預金から投資への流れを起こすために「お金の教育」を顧客に純粋に行う

④全て自前で行うことはせず、資産運用については外部業者への委託なども積極的に行う

だと考えられます。

今のままでは銀行はどんどん厳しくなると想定されます。

預金は流動性を保てないといけないので長期での運用に不向きです。

よって短期の運用に縛られるためパフォーマンスが安定しません。

また、毎期時価で決算を行わないといけないため金利や為替、株価に業績が毎年左右されます。下手をすると自己資本が不足する事態になりかねません。

よって運用するべき資産を適正な水準に減らすためには預金を減らす努力(適正な資産運用へ振り向ける)と貸出額を増加させる必要があります。

また、国も法律や指導で金融機関を締め付けるだけではなく、顧客の教育や投資行動を変えるには時間がかかるので、時価評価の一時停止や銀行経営を支えるための一時的な公的資金投入も検討するべきだと思います。

また、預金者も銀行員が本当に運用相談に足る教育レベルなのかを見極められる知識がある程度必要です。

といっても知識がある程度ついてしまうと、預金で溜め込むことが、銀行の破たんリスクがあるのに殆ど金利がつかない、リスク商品だという現実がわかるので預金に置くことはしなくなると思われます。

対策を早くとらないと、今度は運用財産が毀損した時に自己資本維持のために貸出を抑制する行動に出る可能性も将来考えられるのでそうなると悪循環です。

早めの対策が必要だと考えます。