日々の投資手法研究55 #JDI #INCJ
(経済教室)JDI頓挫と電機の未来(上)利益無視の技術神話見直せ 長内厚・早稲田大学教授 :日本経済新聞
<ポイント>
○技術開発も投資戦略も中途半端で窮地に
○有機ELも液晶も一長一短で使い分けを
○収益性なき性能進化は技術革新にあらず
JDIは2012年に政府系ファンドの産業革新機構(現INCJ)が2000億円を出資して発足した企業。
自動車メーカーに「我々が求めているのは新しい技術ではありません。10年後も同じ部品を作り続けてくれる約束です」と言われた。企業は技術を売っているのではない。売っているのは商品だ。
(経済教室)JDI頓挫と電機の未来(中)技術と経営の掛け算を 若林秀樹・東京理科大学教授 :日本経済新聞
<ポイント>
○同業同士のニッポン企業連合は周回遅れ
○装置含めたエンジニアリングを強化せよ
○長サイクル小ロット製品での強み生かせ
統治の不足や不健全なファイナンス、身の丈を超えた投資などにある。さらに液晶から有機EL(OLED)化についての見通しミス、自社技術への過信、国内再編へのこだわりも問題。
(経済教室)JDI頓挫と電機の未来(下)価値創造へアジアと連携を 中田行彦・立命館アジア太平洋大学名誉教授 :日本経済新聞
<ポイント>
○官民ファンドは産業再生や国内再編中心
○シャープもアップルに過度な依存で失敗
○アジア企業との連携で国際競争に展望を
JDI事業開始は2012年4月。経済産業省所管の官民ファンドの産業革新機構が70%を出資、ソニー、東芝、日立製作所の3社は、現物出資を含めそれぞれ10%を出資し、中小型液晶事業が統合された。
株式公開の約1カ月後および7カ月後に業績予想を下方修正し、株価も3分の1程度にまで下落。
筆頭株主の産業革新機構や経産省の意向が働き、機動的な意思決定が妨げられたとの見方。
歴代の社長が液晶出身ではなく、経験のなさが、業績や投資判断などのガバナンスに影響を与えたと考えられる。
JDIとシャープの事例が示すように、官民ファンドを受け入れた場合には、内向きの国内再編が中心となり、国際競争に展望が持てなくなる。これに対し外向きの国際提携を選択した場合には、アジアとともに価値を創造する「共創」により、国際競争に展望を持つことが期待できる。
感想
6740ジャパンディスプレイです
現在52円、2014年3月に公募価格900円で上場、以来一度も公募価格を上回ることもなく、現在に至ります。
海外からの資金援助を受け入れるかどうか焦点で、受け入れられなかったら最悪倒産の可能性もあります。
かつて日本は半導体、液晶は世界でトップを走っていたはずです。それがなぜこんな事態になってしまったのかこの会社から考えてみました。
上記3つの記事から考えられるのが
1.産業革新機構の出資比率が70%で世界を見渡したアグレッシブな投資や事業展開ができなかった
2.技術にこだわりすぎてユーザーが本当に欲している商品が見えなくなっていた
3.商品の単品売りで利益率が低かった
が考えられます。
〇まず、筆頭株主が産業革新機構(現INCJ)ですが、名前と違って国ばかり見て仕事をしていたのかもしれません、また、天下り先に成り下がっていたのかもしれません。いずれにせよ一つの会社をわずか5年で倒産寸前に追い込んだのは会社や従業員、株主を考えて経営をしていたとは言えません。
また、上場から1か月後と7か月後に下方修正とは株主をだまして上場したといわれても仕方ありません、経営者として1か月前に下方修正する予定がありそうな事実はつかんでいたはずです。国としても投入した資金が回収できなくなる事態を恐れて無理やり上場させたとみられます。主幹事も国に意見が言えなかったのかもしれません。
そしてたった5年で1度も黒字化せずに倒産寸前、国家による詐欺事件みたいです。
上場後の1年間位は会社予想を上回るくらいの決算を出して初めて株主が安心するわけで、連続して下方修正とは株主を見た経営はしていなかったとみられます。
〇次に、技術へのこだわりですが、自動車メーカーの皮肉が理解できていたのかなかったのか、私は金融機関の人間なのでメーカーで技術開発をしていたり、モノづくりに携わる人々の熱意、努力、根気といったものに頭が下がる思いをすることが今まで何度もありました。
しかし、これは日本全体に言えることかもしれませんが、「技術力が高いニッポン」というふわっとした言葉が企業や国をだめにしている気がします。
良く製造業の方はモノづくりの会社が実業、サービス業や金融などを虚業と言って一段下に見る傾向があります。
日本にふんだんに需要があって何を作ってもある程度売れる時代なら言ってられますが、本来は需要あってこその製品であり、技術です。ユーザーに理解されない技術は無駄遣いです。
どちらも重要な実業であり、「良いものを作れば売れる」はただのおごりです。
意識を変えないといけない時期が来ていることを感じさせます。
〇営業面ですが、これはどの産業にも言えますが、一つ一つの商品自体に差があまりなくても顧客ニーズに合わせて組み合わせて提案をし、ニーズを満たせば高い値段でも買ってもらえる事はよくあります。
金融でも同じです。金融商品の単品売りは手数料競争で埋没します。
しかし、顧客意向をよく聞いて踏まえた商品構成でポートフォリオを形成して提案すればオリジナルの金融商品なので手数料面でのたたきあいになることは少ないです。
JDIにはもしかすると、経営陣の国を見て仕事をしていた姿勢が従業員まで浸透しており、どうやったら顧客に満足してもらえるか、どうやったら買ってもらえるかの工夫が不足していたのかもしれません。
内向き志向、過度な技術へのこだわりすぎによる無駄遣い、顧客意向をくみ取らない営業、何度下方修正しても気にしない株主軽視の経営陣と産業革新機構。
これでは倒産状態になっても仕方ないと思います。
今後は海外企業として、シャープのように一から再出発して復活することを期待したいと思います。
買収完了後は上場を維持すれば株式としても買えるのではないかと思います。
また、今回の事例はほかの会社を調べるうえでも非常に貴重な材料になると考えられます。
特に頻繁な下方修正を繰り返す企業は投資は控えたほうが良いと思われます。