No.19 #株式投資長期上昇の波に乗れ! #井出真吾 #日本経済新聞出版社
著者紹介
井出真吾さん
ニッセイ基礎研究所 上席研究員 チーフ株式ストラテジスト
1970年生まれ、東京工業大学卒業後日本生命保険相互会社入社とあります。
理系の方だけに科学的視点で株式市場と向き合うスタイルと紹介されています。
目次と内容について
はじめに
第1章 「身の丈グラフ」でわかる。日本株は新局面へ
第2章 株式投資は以前より難しくなった
第3章 個別株の賢い選び方
第4章 投資信託の賢い使い方
第5章 自分ポートフォリオでしっかり儲ける
第6章 日銀ETF買入が市場に与える影響
おわりに
となっています。
全体としてやはり、理系出身の現役金融機関のチーフ株式ストラテジストだけあって、どんな株式が上昇しやすいのか、過去と現在を比較して株式市場がどう変質しているのかなどについての分析が詳しく書かれています。
まず、最初に「身の丈グラフ」というのが出てきます。
1988年から2018年までの日経平均とPERを出して比較しています。
これによると、1989年ごろのバブル期はPERが60倍程度で現在に直すと1万円程度が妥当で、やはりバブルだったと明快にバブル相場の理由を述べられています。
それに比較すると現在は企業業績がしっかりしており、企業利益の成長を考えると、上下動を繰り返しながらも10年後に日経平均が4万円を超えてもおかしくないと考えており、これが本書のタイトルにも引用されています。
また、日経平均の妥当PERは15倍程度とするのは、価格の推移だけではなく、1950年から2018年までの株式の平均リターンをとると、日本が年率8%、NYダウが7.3%、ドイツDAXが9%で、今後の成長鈍化分を割り引いても7%程度は見込まれ、成長期待の逆数(益利回り)で考えると15倍程度が妥当との判断です。
つまり、価格だけで高いとか安いとかいうのではなく、企業の業績に対してどのくらいまで買われているのかを重視されています。
この数字は驚きの数字でもあります。平成相場の悪い印象しか無いような日本株と現在好調の米国株を超長期で比較すると同じかむしろ日本のほうが平均のリターンが高いわけです。日本株も捨てたものでないです。
個別株投資については投資をするにあたり、単純にPERやPBRの指標が低い銘柄は期待できず、ROEが高く、なおかつROEが今後も改善する見通しの株式が有望と書かれています。また、四半期決算についても前期との進捗率が5%以上改善している銘柄がパフォーマンスが良いという分析結果をグラフとともに載せています。
これは納得で、本書にもありますが、海外ではROEが指標の主流です。
株主から預かった資金をいかに活用してしっかり会社を成長させるかが経営者の責務で結果が出たら多額の報酬を得ているのは周知の事実です。
日本の企業が資金をため込んでおり、活用できていない企業が散見されるのが批判されています。私もただ、ため込んでいるだけなら配当に回すか、自社株買いをするのが上場会社の責任だと思っているのでROEの水準や改善度合いに着目するのはよいと思います。
一方でROEがどんな改善の仕方なのか、将来も改善しそうなのかというのは会社そのものの分析になるので、四季報とかをじっくり読むと良いと感じました。
また、四半期決算は個別銘柄投資を行う中でとても悩ましいです、良いと思った決算なのに売り込まれることもしばしばです。しかし、進捗率が高く、ROEも改善している銘柄ならば好感されやすく、されなくても保有を継続する気持ちが保てます。
また、個別銘柄の紹介は割愛しますが、新しい投資の視点として特許価値に着目した22銘柄を紹介しています。
最近目に見えない価値に着目する投資が出てきてますが、具体的に見えない価値を理解するのは個人投資家には不可能です。
これを工藤一郎国際特許事務所が開発したYK値という指標があり、具体的活用とともに紹介されています。
その他株式投資で注意点としてはテーマに振り回されないこととし、テーマ株投資には懐疑的です。値動きが激しく、大損する可能性に触れています。
となると、本書内では触れてませんが、テーマ株ファンドもやはり懐疑的なのではないのかな?と感じました。
投資信託の活用にも細かく触れてますが、私が印象に残った一文が
「ある期間にリスクが高い投信は別の期間でも相対的にリスクが高い」
「リターンには継続性が全く認められません」
つまり、昨年のパフォーマンス上位投信をおススメ!とかに乗っても単純に成績が良かっただけでこれからもいいかどうかはわからず、リスクが大きい投信がたまたま上位に来ているだけかもしれないということです。
販売手数料、信託報酬、リスクの度合いも考えて「コスパ」重視を強調しています。
では、実際にどのような資産をどの程度の比率で組み合わせるかの具体例ですが、GPIFの資産構成を参考例として紹介しています。
そして、具体的にどの商品をどの割合で組むとよいのかも本書の中で紹介しています。
また、その他個別株の具体的な運用方法にも触れており、日経平均銘柄で活用するとよい理論「ダウの犬」理論を紹介し、実際のポートフォリオも紹介されています。
最後の章では日銀の株式買い入れについての理解と著者なりの解決策も提示されています。日銀が株式を購入するのがとても珍しく取り上げられますが、香港が1998年に大量に買い入れた前例はあるそうです。
本書全体を通してみると、キーワードがいくつかあるなと感じます。
①ROEとその改善度合いの予想
②実績としての四半期決算の進捗チェック
③はやりのテーマには乗らない
が個別株で特に重視するポイントだと思われます。
また、投信では
①リスク度合いがどの程度なのか、どんな資産に投資をしているのかがまず大切
②手数料なども含めてコスパが大切
です。
具体的にROEの予想の出し方や、225版「ダウの犬」理論の実践、「身の丈グラフ」の詳細解説は本書の中に詳しく書いてあるのでご覧ください。
株価だけを見て投資をするのではなく、企業利益の成長を重視しているスタイルです。
ブログでは簡単にしか触れてませんが、GPIFのポートフォリオ構成を参考とした具体的な金融商品で実際に個人でも買える運用商品の紹介は本書の中で個別銘柄までしっかりと書かれており、管理方法についても書いてあるので個別銘柄運用は時間がなくて、長期でインデックス投資を行う人にも活用できる本だと思います。
この組み合わせだけでも4万円の日経平均が実現した時に大きな果実を手にできると思います。
注意
ブログはあくまで私の参考意見です。読んだ方によって印象が違う可能性もあります。
これをきっかけにご興味を持たれましたら、ぜひ本書をご購入の上お読みください