日々の投資手法研究52 #米ドル #人民元
人民元、ドル覇権に一石 独自決済、89カ国・地域の865銀行に 米の制裁国取り込む :日本経済新聞
①人民元の国際化を狙う中国独自の国際決済システムが2015年10月の稼働後、銀行の参加が89カ国・地域の865行に広がっていることが日本経済新聞の調べでわかった
②現在の国際決済は、ベルギーに本部を置く国際銀行間通信協会(SWIFT)のシステムを通じて送金情報をやり取りするのが主流だ。その決済額は1日あたり5兆~6兆ドル(550兆~660兆円)とされ、事実上の国際標準になっている。うち4割がドル決済で、SWIFTがドル覇権を支えている状況
③経済制裁をアメリカから受けているロシアやイラン、一帯一路に参加するアフリカ諸国なども人民元決済を利用する
米制裁 ドル離れ招く ロシア・イラン、代替決済探る :日本経済新聞
①中国とロシアの取引では人民元を欲しがる中国零細企業も多い
②ロシアは18年に外貨準備で保有するドルを半分に減らしてユーロと人民元を組み入れている模様
③世界の資金決済における米ドルのシェアは4割、特に資源関連だと圧倒的
感想
この記事を活用して金融機関が金融商品を売り込むには好都合な印象を受けました。
しかし、乗っていいのか、比率はどうすればいいのかを考えてみます。
と同時に資産分散を行う上での比率の参考にもなると考えます。
まず、記事の見出しはドル離れが進んでおり、人民元が存在感を増しているとあり、これに関しては人民元による決済が2018年に410兆円規模に拡大していることから人民元が存在感を増していることは間違いないです。
一方で世界の資金決済の額が1日あたり550-660兆円で、うち4割が米ドルとも書いてあります。人民元の決済シェアは計算上約1.8%です。
米ドルの1/20程度です。
投資面から
金融機関の営業がこの記事のコピーを持参して「これからは人民元ですよ!」と言って中国系の投資信託を売り込む可能性もあります。が、金額については慎重にしたほうがいいです。
理由は簡単で、まだ海外での資金決済で世界の1.8%のシェアしか無い通貨なので国際社会での信用力がまだ未知数だからです。
金融資産の2%程度なら投資してもいいと思います。
一方で米ドルは40-50%程度投資しても良い通貨だと考えます、決済額で40%以上、株式の時価総額でも50%以上を占め、資産分散先として主力通貨になると考えます。
今後のドル覇権について
記事では今後米ドルの覇権が中国の影響力増大で脅かされる様な書き方でしたが、そうなるにはまだまだ時間がかかるし、果たして国際社会で人民元が広がるのかは不透明です。
理由は
①中国政府の意思で個人や企業の資産が没収されるリスクがある
中国の富裕層が日本含め海外で資産を爆買いしているのは事実ですが、背景には国家にいつ資産を没収されるかがわからない不安感が背景にあるとよく言われます。
社会主義国家で共産党1党独裁国家なので個人や企業の資産は国の意思でどうとでもなってしまいます。政治体制が変わらないと世界から信用されないと感じます。
②人民元の交換レートが中国政府の意思で決まる
米ドルや円、記事に出てきたトルコリラやロシアルーブル含め各国の為替レートは市場で自由に取引されてレートは市場によって決まります。
ただ、人民元は中国政府が日々為替介入を行い、対ドルでの交換レートは国家が管理しています。
となると、今後米国との貿易戦争が激化して人民元を大幅に切り下げる措置をとることも可能で、レートが国の恣意的に決まる通貨が本当に財産として保有し続けられるのかはとても疑問です。
中国は経済規模が世界2位の大国なのである程度人民元を保有すことにはなり、今後世界での利用が拡大はすると考えますが、ドルの覇権を脅かす存在になるとは考えにくいです。
現在人民元を輸出入で積極的に拡大しているロシアやトルコなどは米国からの制裁があるから仕方なく人民元で保有している現実もあると思われます。
結論
記事の見出しは大きく、1面記事なのでインパクトは強いですが、人民元をだからと言って今保有する必要はないです。
中国の株式や債券に投資する投資信託を売り込まれて持ってもいいですが、先に書いたように金融資産の2%程度が妥当です。1億円保有する人で200万円です。
やはり、資産を国家がいつでも没収できたり、レートをいつでも変更できる国が世界から信頼を受けないので現状では力づくで人民元利用を広げるでしょうが、限界はあると思います。
何より、中国自体が、人民元レートの為替介入の原資としても貿易での決済通貨としても米ドルを一番欲しがっている国ですから。