日々の投資手法研究47 #トヨタ自動車
トヨタ自動車の決算発表が印象的だったので記事と決算内容について書いてみました
トヨタ「次世代の移動基盤に」 前期営業益3%増、売上高初の30兆円 原価低減徹底が寄与 :日本経済新聞
まず、日経新聞には好意的な記事が書いてありました
①トヨタ自動車が8日発表した2019年3月期の連結決算(米国会計基準)は、営業利益が前の期比3%増の2兆4675億円
②「CASE」への投資は拡大するが吸収した。売上高は日本企業で初めて30兆円台の大台に乗った
③純利益を世界販売台数で割った「1台当たり利益」はトヨタの18年度までの過去3年間は約20万円。14年度までの3年間平均から2割上昇
高級車が中心であるダイムラーや独BMW(約40万~50万円)には及ばないが、大衆車も手掛ける独フォルクスワーゲン(約11万円)、米ゼネラル・モーターズ(約5万円)などを大きく上回る
全体的に北米の回復、中国の売り上げ増、原価低減努力の効果もあって世界大手の中で非常に好調な結果を出していることが強調されています
しかし、
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO44533880Y9A500C1X11000/
①2019年3月期の連結営業利益は2兆4675億円と前の期を2.8%上回る
これは豊田章男氏が社長に就いてから10年間で3番目の水準
②豊田社長は「ビジネスモデルそのものが壊れる可能性がある」
「トヨタは大丈夫というのが一番、危険な言動」と危機感が強い
③研究開発費は20年3月期に1兆1000億円と過去最大で将来的にCASEに対応する投資は5割近くを占めるようになる
一方、米IT(情報技術)の巨人の研究開発費は2兆~3兆円規模にのぼる
④またトヨタの労務費は膨らみ、20年3月期に650億円の減益要因
そこで
https://global.toyota/pages/global_toyota/ir/financial-results/2019_4q_presentation_jp.pdf
トヨタ自動車のIR資料から決算発表の内容を見てみました。
すると、
販売台数はざっと900万台で日本220万台、北米270万台、欧州100万台、アジア170万台、その他130万台です。
販売台数でいうともはやアメリカのトヨタの印象が強く、日本は全体の1/4に過ぎません。
しかし、地域別営業利益を見ると驚くことに、
日本1.69兆円、北米1441億円、欧州1211億円、アジア4537億円、その他895億円となっており、トヨタ全体の営業利益の70%近くが日本で稼がれており、やはり日本の会社なんだなと強く感じられます。
1台当たりの利益が日経で各社比較がありましたが、地域別でみると
日本77万円、北米5.3万円、欧州12万円、アジア26万円、その他6.8万円となり、日本での1台当たりの利益が突出しており、北米だと記事にあったフォード並みということになります。北米増益と書かれていましたが、国内販売利益の増減がトヨタにとって最も大きな利益変動要因です。
その他は金融事業で3423億円の営業利益です。
株主還元はかなり積極的な印象です。
配当に6500億円、自社株買いに5500億円と1.2兆円を還元に吐き出しており、還元率は約50%です。
2020.3予想は売上は30兆円、営業利益は2.55兆円、2.25兆円を予定しており、営業利益の伸び率は3.6%ですのでかなり慎重にみています。
なぜ豊田社長が危機感を持つのが決算発表を見るとわかる気がしました。
全世界9500万台の販売の1割を占める日本を代表する製造業で、37万人も従業員がいて、就職ランキングでも常に上位常連のトヨタなので人材も必ず集まります。
①しかし、CASE対応で1.1兆円の研究開発費の40-50%を投じていても、新たに出てきた米IT大手は2-3兆円を投じており、圧倒的な差が出てきてしまっている。
既に自動車メーカーの敵が自動車メーカーではない現実があるのが一つ。
②次に営業利益が2.5兆円近いといっても日本で稼いだ利益が70%となり、偏りがあることと、日本国内に目を向けると「車離れ」は深刻です。
国内の営業利益を出しているうちに次の時代の主役になれないと、トヨタもかつての半導体メーカーの道をたどることになりかねないと感じた次第です。
最後に株価チェックを四季報オンラインのデータで見ておきます
来期予想PERは9.61倍、PBRに至っては0.95倍と純資産価格割れ、配当利回りも3.36%、2019/05/10終値6537円で時価総額21.6兆円でPSRが0.7倍と足元の株価と各指標は決して高くなく、むしろ割安株の印象さえ受けます。
今後トヨタが世界の中で打ち勝てると信じるのであれば長期投資として購入するのも面白いかもしれません。