日々の投資手法研究55 #JDI #INCJ
(経済教室)JDI頓挫と電機の未来(上)利益無視の技術神話見直せ 長内厚・早稲田大学教授 :日本経済新聞
<ポイント>
○技術開発も投資戦略も中途半端で窮地に
○有機ELも液晶も一長一短で使い分けを
○収益性なき性能進化は技術革新にあらず
JDIは2012年に政府系ファンドの産業革新機構(現INCJ)が2000億円を出資して発足した企業。
自動車メーカーに「我々が求めているのは新しい技術ではありません。10年後も同じ部品を作り続けてくれる約束です」と言われた。企業は技術を売っているのではない。売っているのは商品だ。
(経済教室)JDI頓挫と電機の未来(中)技術と経営の掛け算を 若林秀樹・東京理科大学教授 :日本経済新聞
<ポイント>
○同業同士のニッポン企業連合は周回遅れ
○装置含めたエンジニアリングを強化せよ
○長サイクル小ロット製品での強み生かせ
統治の不足や不健全なファイナンス、身の丈を超えた投資などにある。さらに液晶から有機EL(OLED)化についての見通しミス、自社技術への過信、国内再編へのこだわりも問題。
(経済教室)JDI頓挫と電機の未来(下)価値創造へアジアと連携を 中田行彦・立命館アジア太平洋大学名誉教授 :日本経済新聞
<ポイント>
○官民ファンドは産業再生や国内再編中心
○シャープもアップルに過度な依存で失敗
○アジア企業との連携で国際競争に展望を
JDI事業開始は2012年4月。経済産業省所管の官民ファンドの産業革新機構が70%を出資、ソニー、東芝、日立製作所の3社は、現物出資を含めそれぞれ10%を出資し、中小型液晶事業が統合された。
株式公開の約1カ月後および7カ月後に業績予想を下方修正し、株価も3分の1程度にまで下落。
筆頭株主の産業革新機構や経産省の意向が働き、機動的な意思決定が妨げられたとの見方。
歴代の社長が液晶出身ではなく、経験のなさが、業績や投資判断などのガバナンスに影響を与えたと考えられる。
JDIとシャープの事例が示すように、官民ファンドを受け入れた場合には、内向きの国内再編が中心となり、国際競争に展望が持てなくなる。これに対し外向きの国際提携を選択した場合には、アジアとともに価値を創造する「共創」により、国際競争に展望を持つことが期待できる。
感想
6740ジャパンディスプレイです
現在52円、2014年3月に公募価格900円で上場、以来一度も公募価格を上回ることもなく、現在に至ります。
海外からの資金援助を受け入れるかどうか焦点で、受け入れられなかったら最悪倒産の可能性もあります。
かつて日本は半導体、液晶は世界でトップを走っていたはずです。それがなぜこんな事態になってしまったのかこの会社から考えてみました。
上記3つの記事から考えられるのが
1.産業革新機構の出資比率が70%で世界を見渡したアグレッシブな投資や事業展開ができなかった
2.技術にこだわりすぎてユーザーが本当に欲している商品が見えなくなっていた
3.商品の単品売りで利益率が低かった
が考えられます。
〇まず、筆頭株主が産業革新機構(現INCJ)ですが、名前と違って国ばかり見て仕事をしていたのかもしれません、また、天下り先に成り下がっていたのかもしれません。いずれにせよ一つの会社をわずか5年で倒産寸前に追い込んだのは会社や従業員、株主を考えて経営をしていたとは言えません。
また、上場から1か月後と7か月後に下方修正とは株主をだまして上場したといわれても仕方ありません、経営者として1か月前に下方修正する予定がありそうな事実はつかんでいたはずです。国としても投入した資金が回収できなくなる事態を恐れて無理やり上場させたとみられます。主幹事も国に意見が言えなかったのかもしれません。
そしてたった5年で1度も黒字化せずに倒産寸前、国家による詐欺事件みたいです。
上場後の1年間位は会社予想を上回るくらいの決算を出して初めて株主が安心するわけで、連続して下方修正とは株主を見た経営はしていなかったとみられます。
〇次に、技術へのこだわりですが、自動車メーカーの皮肉が理解できていたのかなかったのか、私は金融機関の人間なのでメーカーで技術開発をしていたり、モノづくりに携わる人々の熱意、努力、根気といったものに頭が下がる思いをすることが今まで何度もありました。
しかし、これは日本全体に言えることかもしれませんが、「技術力が高いニッポン」というふわっとした言葉が企業や国をだめにしている気がします。
良く製造業の方はモノづくりの会社が実業、サービス業や金融などを虚業と言って一段下に見る傾向があります。
日本にふんだんに需要があって何を作ってもある程度売れる時代なら言ってられますが、本来は需要あってこその製品であり、技術です。ユーザーに理解されない技術は無駄遣いです。
どちらも重要な実業であり、「良いものを作れば売れる」はただのおごりです。
意識を変えないといけない時期が来ていることを感じさせます。
〇営業面ですが、これはどの産業にも言えますが、一つ一つの商品自体に差があまりなくても顧客ニーズに合わせて組み合わせて提案をし、ニーズを満たせば高い値段でも買ってもらえる事はよくあります。
金融でも同じです。金融商品の単品売りは手数料競争で埋没します。
しかし、顧客意向をよく聞いて踏まえた商品構成でポートフォリオを形成して提案すればオリジナルの金融商品なので手数料面でのたたきあいになることは少ないです。
JDIにはもしかすると、経営陣の国を見て仕事をしていた姿勢が従業員まで浸透しており、どうやったら顧客に満足してもらえるか、どうやったら買ってもらえるかの工夫が不足していたのかもしれません。
内向き志向、過度な技術へのこだわりすぎによる無駄遣い、顧客意向をくみ取らない営業、何度下方修正しても気にしない株主軽視の経営陣と産業革新機構。
これでは倒産状態になっても仕方ないと思います。
今後は海外企業として、シャープのように一から再出発して復活することを期待したいと思います。
買収完了後は上場を維持すれば株式としても買えるのではないかと思います。
また、今回の事例はほかの会社を調べるうえでも非常に貴重な材料になると考えられます。
特に頻繁な下方修正を繰り返す企業は投資は控えたほうが良いと思われます。
No.19 #株式投資長期上昇の波に乗れ! #井出真吾 #日本経済新聞出版社
著者紹介
井出真吾さん
ニッセイ基礎研究所 上席研究員 チーフ株式ストラテジスト
1970年生まれ、東京工業大学卒業後日本生命保険相互会社入社とあります。
理系の方だけに科学的視点で株式市場と向き合うスタイルと紹介されています。
目次と内容について
はじめに
第1章 「身の丈グラフ」でわかる。日本株は新局面へ
第2章 株式投資は以前より難しくなった
第3章 個別株の賢い選び方
第4章 投資信託の賢い使い方
第5章 自分ポートフォリオでしっかり儲ける
第6章 日銀ETF買入が市場に与える影響
おわりに
となっています。
全体としてやはり、理系出身の現役金融機関のチーフ株式ストラテジストだけあって、どんな株式が上昇しやすいのか、過去と現在を比較して株式市場がどう変質しているのかなどについての分析が詳しく書かれています。
まず、最初に「身の丈グラフ」というのが出てきます。
1988年から2018年までの日経平均とPERを出して比較しています。
これによると、1989年ごろのバブル期はPERが60倍程度で現在に直すと1万円程度が妥当で、やはりバブルだったと明快にバブル相場の理由を述べられています。
それに比較すると現在は企業業績がしっかりしており、企業利益の成長を考えると、上下動を繰り返しながらも10年後に日経平均が4万円を超えてもおかしくないと考えており、これが本書のタイトルにも引用されています。
また、日経平均の妥当PERは15倍程度とするのは、価格の推移だけではなく、1950年から2018年までの株式の平均リターンをとると、日本が年率8%、NYダウが7.3%、ドイツDAXが9%で、今後の成長鈍化分を割り引いても7%程度は見込まれ、成長期待の逆数(益利回り)で考えると15倍程度が妥当との判断です。
つまり、価格だけで高いとか安いとかいうのではなく、企業の業績に対してどのくらいまで買われているのかを重視されています。
この数字は驚きの数字でもあります。平成相場の悪い印象しか無いような日本株と現在好調の米国株を超長期で比較すると同じかむしろ日本のほうが平均のリターンが高いわけです。日本株も捨てたものでないです。
個別株投資については投資をするにあたり、単純にPERやPBRの指標が低い銘柄は期待できず、ROEが高く、なおかつROEが今後も改善する見通しの株式が有望と書かれています。また、四半期決算についても前期との進捗率が5%以上改善している銘柄がパフォーマンスが良いという分析結果をグラフとともに載せています。
これは納得で、本書にもありますが、海外ではROEが指標の主流です。
株主から預かった資金をいかに活用してしっかり会社を成長させるかが経営者の責務で結果が出たら多額の報酬を得ているのは周知の事実です。
日本の企業が資金をため込んでおり、活用できていない企業が散見されるのが批判されています。私もただ、ため込んでいるだけなら配当に回すか、自社株買いをするのが上場会社の責任だと思っているのでROEの水準や改善度合いに着目するのはよいと思います。
一方でROEがどんな改善の仕方なのか、将来も改善しそうなのかというのは会社そのものの分析になるので、四季報とかをじっくり読むと良いと感じました。
また、四半期決算は個別銘柄投資を行う中でとても悩ましいです、良いと思った決算なのに売り込まれることもしばしばです。しかし、進捗率が高く、ROEも改善している銘柄ならば好感されやすく、されなくても保有を継続する気持ちが保てます。
また、個別銘柄の紹介は割愛しますが、新しい投資の視点として特許価値に着目した22銘柄を紹介しています。
最近目に見えない価値に着目する投資が出てきてますが、具体的に見えない価値を理解するのは個人投資家には不可能です。
これを工藤一郎国際特許事務所が開発したYK値という指標があり、具体的活用とともに紹介されています。
その他株式投資で注意点としてはテーマに振り回されないこととし、テーマ株投資には懐疑的です。値動きが激しく、大損する可能性に触れています。
となると、本書内では触れてませんが、テーマ株ファンドもやはり懐疑的なのではないのかな?と感じました。
投資信託の活用にも細かく触れてますが、私が印象に残った一文が
「ある期間にリスクが高い投信は別の期間でも相対的にリスクが高い」
「リターンには継続性が全く認められません」
つまり、昨年のパフォーマンス上位投信をおススメ!とかに乗っても単純に成績が良かっただけでこれからもいいかどうかはわからず、リスクが大きい投信がたまたま上位に来ているだけかもしれないということです。
販売手数料、信託報酬、リスクの度合いも考えて「コスパ」重視を強調しています。
では、実際にどのような資産をどの程度の比率で組み合わせるかの具体例ですが、GPIFの資産構成を参考例として紹介しています。
そして、具体的にどの商品をどの割合で組むとよいのかも本書の中で紹介しています。
また、その他個別株の具体的な運用方法にも触れており、日経平均銘柄で活用するとよい理論「ダウの犬」理論を紹介し、実際のポートフォリオも紹介されています。
最後の章では日銀の株式買い入れについての理解と著者なりの解決策も提示されています。日銀が株式を購入するのがとても珍しく取り上げられますが、香港が1998年に大量に買い入れた前例はあるそうです。
本書全体を通してみると、キーワードがいくつかあるなと感じます。
①ROEとその改善度合いの予想
②実績としての四半期決算の進捗チェック
③はやりのテーマには乗らない
が個別株で特に重視するポイントだと思われます。
また、投信では
①リスク度合いがどの程度なのか、どんな資産に投資をしているのかがまず大切
②手数料なども含めてコスパが大切
です。
具体的にROEの予想の出し方や、225版「ダウの犬」理論の実践、「身の丈グラフ」の詳細解説は本書の中に詳しく書いてあるのでご覧ください。
株価だけを見て投資をするのではなく、企業利益の成長を重視しているスタイルです。
ブログでは簡単にしか触れてませんが、GPIFのポートフォリオ構成を参考とした具体的な金融商品で実際に個人でも買える運用商品の紹介は本書の中で個別銘柄までしっかりと書かれており、管理方法についても書いてあるので個別銘柄運用は時間がなくて、長期でインデックス投資を行う人にも活用できる本だと思います。
この組み合わせだけでも4万円の日経平均が実現した時に大きな果実を手にできると思います。
注意
ブログはあくまで私の参考意見です。読んだ方によって印象が違う可能性もあります。
これをきっかけにご興味を持たれましたら、ぜひ本書をご購入の上お読みください
日々の投資手法研究54 #企業分析 #会計士 #目に見えない価値
(Deep Insight)良い会社こう見つける :日本経済新聞
①監査法人PwCあらたのパートナー、久保田正崇氏は人工知能(AI)を使ったリアルタイム監査の時代が来ると思い描く
企業の状態を常時ウオッチできるシステムが将来できるといつでも投資家の質問にも答えられるし企業の内容をチェックできる
②転職サイトなどの書き込みからも情報を集めて企業の文化や状態をチェックできる
③IoTの時代になると、財務諸表では読み取れない企業の生の状態が取れ、監査に生かせる
④世界最大の資産運用会社の米ブラックロックでは、店舗に集まる人の動きや従業員満足度等をAIやデータによって図るチームを保有する
有価証券報告書に加えて、経営方針の説明文などを自然言語処理で読み込み、経営者の意思を探る
ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は企業に本気の企業理念を持てと説いている
⑤米セールスフォース・ドットコムは社内に不平等を撲滅する「CEO」(チーフ・イクオリティ・オフィサー)という肩書の幹部を置いて、人種の多様化、賃金格差を埋めるべく行動させている
⑥マネーフォワード子会社のMF KESSAIはウェブ上のデータをもとに与信する自前のモデルを編み出して銀行取引ができないような企業にも売上債権の回収を代行している
感想
監査法人は不要だとか言われて久しく、難しい試験に通っても稼げないし、仕事もない、挙句の果てに不正会計の手伝いをさせられて訴訟リスクも背負うイメージがついていて、受験者が激減して逆に現在人手不足・・・と何かと大変な業界です。
ただ、企業と監査法人がシステムでつながると、現場の状態や人の書き込みなど今まで財務諸表という数字の塊でしか見られなかった企業の生の姿が常に見えるようになるので状況は一変します。
一方で会計監査だけができる机の上だけの仕事のみ得意な人は仕事は相変わらず減るでしょうが、企業や業界に詳しく、情報を手にしたときに変化や異常に気付ける人材がこれからは監査法人に求められるので監査法人の役割や求人のタイプも変わってくるのではないかと考えられます。
また、投信運用会社ブラックロックの例を見ても数字に表れる前の企業の状態をいち早く察知しようとか、経営者の発言や、従業員の動き、状態をチェックして株式投資に生かそうといういわば「見えない価値」に着目する運用はこれからも広がるでしょう。
マネーフォワードの取り組みは既存銀行にとっては脅威以外の何物でもないです。
情報がわからないから取引しない銀行にとって、わからないものをわかるようにするモデルを保有しているならしっかりとした財務データを保有できている企業はたやすく与信ができてしまうので銀行不要論に拍車をかけてしまいます。
株式で考えると、個人がブラックロックと同様の行動を行うのは限界があります。
一番わかりやすいのがマネーフォワードのような既存の金融機関にとって代わるフィンテックビジネスの企業に幅広く投資をすることです。
地方銀行、都市銀行、証券会社、ノンバンク等の時価総額はまだまだ巨大で置き換わるならここに投資をしていた資金が流れてくるのは必然です。
もう一つが、まだ黎明期ですが、監査法人が新しい取り組みを行い始めているならこれが広がってきたときにいち早く取り入れている監査法人の監査を受けている企業を選んで投資することだと考えます。
自信があるからこそその監査法人の監査を受けられる企業とも言えます。
ただ、注意したいのが、これらの内容は結果として決算にしっかり反映されるということです。
目に見えない価値はとても大切ですが、ブラックロックの例を見て分かるように店舗を広げている企業の店舗に顧客が集まっているなら自然と売り上げは上がりますし、会社計画をしっかり毎期達成できるはずです。それは投信会社の資金を呼び込むし株価にも反映されます。
着眼点として目に見えない価値があると考える一方で企業理念や社長の発言、取り組みは素晴らしくても目先の決算数字が会社計画を下回ってばかりでいる企業はやはり売りであって、株価も低迷します。
日々の投資手法研究53 #新円切り替え #ハイパーインフレ
(核心)令和財政 大戦時より深刻 上級論説委員 大林尚 :日本経済新聞
記事のポイント
①1991年5月に日経平均は25000円台、当時の首相宮沢喜一氏は大手銀行に不良債権処理目的で公的資金を注入するかどうか検討していた
②しかし、当の銀行に危機感がなかったことやコスト負担問題、危機が起こっていない段階での投入は支持が得られず断念
③結果として危機がおこり、1992年から10年間で90兆円以上が必要とされた
④1890年以降の国家の債務規模をGDPと比較すると大戦末期にGDPの2倍になったが今は2.2倍
⑤当時は大戦の戦費負担だったが、現在は社会保障費が大きい
⑥最終的に敗戦後は超インフレ、新円切り替えなど財産が大きく毀損する結果になった
感想
第一印象として消費税増税を行うかどうかでもめているときなので、増税するほうがいいと考えている人が意見を書いたのかな?と疑いはしました。
また、戦後のことを補足するとインフレと旧円と新円の切り替えは事実ですが、同時に財産税という一度限りの事実上の財産没収が行われたことは書いてないです。
なぜ書かなかったのか、財務省にとって言いたくない歴史なのかもしれません。
少し反論めいた書き方になりますが、当時と今とでは状況が違いすぎます。
当時は敗戦直後で外国からの信用力が地に落ちていた時で海外資産も没収された状態です。
信用力のないところに戦費調達の膨大な債務の残りがあり、戦後復興の為に資金がいる、復員で人口が増大する、海外植民地が無くなり、資源輸入が出来ないなどを考えると物資不足でインフレは当然です。
当時の為替レートは戦前に1ドル4-5円程度だったのが300円を超えたわけで輸入物価の上昇は明確でした。
一方で、現在日本は世界最大の債権国であり、海外に企業の進出も目覚ましい状況です。
また、個人金融資産も1800兆円あり、今すぐ信用状態が戦後と同じになるとは思えません。
もちろん膨らむ債務を放っておいてよいというつもりはないですが、戦後と単純に債務のGDP比率だけをあげて、大変だと書くのは日経新聞にしては短絡的な気がしてしまいます。
警戒すべきは極端ではなくても為替の円安やインフレへの備えだと思います。
記事の中では戦後の円切り替え時に財産を守った資産についても書かれてはいません。
農地解放や財産税については国家の財産に対する介入なので日本人である以上対策が厳しいですが、インフレから守ったり、円切り替えから守られた資産というと、不動産、株式、外貨、金などがあげられます。つまり、お金以外の価値ある資産です。
株式は1950年から東証再開となってますが、株券を直接取引所に持ち込んで相対で取引することは行われていました。
私が驚いたのが、東証が閉鎖されたのが1945年の8月6日で、相対取引で再開されたのが終戦直後の8月27日だったそうで、当時の証券会社の人々や日本人の底力を感じます。
現在は貨幣管理は中央銀行の管理が強く、むしろ第4次産業革命の影響でデフレ傾向です、こんな時に引き締めと同義の増税を「財政赤字が大変だから」と言って行うと景気に甚大な影響が出てしまいます。
むしろ、今は借金の額は気にせず積極的に財政出動を行わないといけない時期だと考えます。
また、個人としては国家は政策の失敗の責任を「戦争」であっても「インフレ」であっても取らないので資産を分散して変動に備えることが大切だと考えます。
平成のデフレ時代は銀行預金、円での日本国債が最強でした。
つまり、今、日本人の個人金融資産が6割が運用されていない状態なのは正しい行動だったわけです。
しかし、アベノミクスはインフレ政策です。
年金を管理するGPIFも資産を日本株式や外国株式を中心とした運用を始めました。
そろそろ本格的に運用を行い、せめて年率2-3%程度の財産の成長が見込まれる物に投資を考えないと10年後に見かけの数字は同じでも価値は7-80%に減ってしまうことになりかねません。
そんな時に歴史を知らない、販売だけが目的の金融機関が殆どの状況は不幸ですが、気にせず、国際分散投資のコストの安い世界株式インデックスやTOPIXのETF、外国債券などをバランスよく保有する運用を自分で組むことが必要だと考えます。
No.12改訂 #「テンバガー」10倍株で勝つ #朝香友博 #アールズ出版
著者紹介
朝香友博さん
本が書かれたのは2013年の9月です。
この前の4年間で6つの10倍株をヒットさせ、
投資プロマガランキング1位を獲得したブログ「大化け株投資のすすめ」を主宰されてます。
年間500社に及ぶ企業の売り上げ拡大や見本市を中心とした市場開拓を支援されているそうです。
目次
序章 15分でわかる「10倍上がる株で勝つ」入門
第1章 リスクが大きいようで小さい10倍株投資
第2章 大化け加速サインを見抜く「チャート3点分析」
第3章 大化けする株の経営・財務
第4章 さあ、10倍期待の成長株をピックアップしよう
第5章 中長期投資で、これだけはやってはいけないこと
第6章 明日のスター企業を探し求めて
あとがき
です。
本書の内容と読んだ上での感想
投資の勉強を2人の人に教えたところ、何時間もかけて教えた人より短時間で要点だけ教えた人が成績が良かった結果になったそうです。
その要点とは
①1年半来終値高値の株価になっている
②週足で平均以上の出来高がある
③上昇優位のローソク足(上昇力が下落力より少しでも上回っていればよい)
この3点を満たした時に大化け加速サイン点灯とする。
④そして会社分析を行い、合格であればこの大化け加速サイン点灯後の翌週に買い
⑤下落は我慢
会社分析の要点は
A時価総額1300億円以下、手持ち資金小さい場合は250億円以下
B自社株を保有する経営陣が大株主に入っているか(オーナー企業であるか)
C売上が5年前比で1%でも増収で、かつ予想売上が増収
D予想営業利益が増益または黒字転換か
だそうです、このほか、会社の財務内容を判断するポイント等についても本書では詳しく書かれています。
買うときの注意点は
Ⅰ1銘柄につき3-5単元購入
Ⅱ買う銘柄の種類も5-10銘柄に分散購入
売るときは
α3倍、5倍、10倍で利益確定
β撤退は1年半の期間で最も安い株価になったらいやでも撤退
γ魅力的な会社がこのラインを割れない間は買い増しのチャンス
です。
分散投資を行う理由は全体のリスクを減らすためで、1銘柄でも大きく伸びるとその他を大いにカバーしてくれるからです。
また、スタイルとしてはデイトレはしないそうです。
勝ち組、負け組についても記述があって、
損切で62%、利確で76%の人がルールを持っていない。
負け組の特徴は予算内で購入できる、著名な大企業、優待が魅力、注目のテーマで銘柄を選ぶ傾向がある。
と書かれてて、自分が負けた時を思い浮かべると、該当します。
調べて何となく上がりそうと思うと余り考えずに買い、買った翌日から気になり、下がってしまうと不安になってしまって売却してしまう・・・を繰り返してました。
勝ち組の特徴は投資ルールを設定したうえで、時間軸を長くとり、有望な企業に投資をしている傾向がある。
なるほどと思いますね、短期の上下動は気にしない、ギャンブルにしてしまわないことが大切ですね。
また、最初に1年半以内で高値更新した株を購入する上で企業分析をどのように行っているかを丁寧に書いてくださってます。
四季報を活用し、売り上げが伸びているか、今後も伸びそうかなどの分析を著者の目線でポイントをわかりやすく解説しています。
その他、指標としては著者はROEではなく、ROAを大切にしているそうです。
逆に株価が、1年半内で最も安い株は避けることとしています。
買うポイントと逆ですね。
また、個人投資家が陥りやすい「わな」の解説では極端にPERが低い、PBR1倍割れ=割安とのサインを鵜呑みにしないとも書かれています。
単純にPERが安い株だと実は倒産寸前だったなんて話はよくありますからね。
また、本書内では投資哲学も紹介されています
(何を)自分が将来性を理解でき、底堅く過熱感のない上昇域の大きい銘柄を
(いつ)中長期投資家の美人投票がスタートしたときに買い、相場のトレンドに乗って、利益を上乗せし、
(いつ)最大多数の投資家が中長期の上昇を見かねて我も我もと飛び乗ってきたときに大部分を売りぬき、
(いつ)さらに直近安値割れ、大きな節割れで売り、1年半来終値安値では撤退する
と明確です。
ここまでシンプルなスタイルにまとめるまではとても時間がかかったと感じます。
そして、非常にたくさんの方が挫折してしまいそうなポイントですが、とても大切なのが以下の一文で、
超長期投資に欠かせないのは「絶対に成功するぞ」という自らの強い意志と忍耐、知識と習慣。
とあり、株価が下がった時に折れてしまいそうなときに強い意志で耐えることの大切さ、また、耐えられる精神を支える分析の重要さを説いてくれてます。
手法自体は非常にシンプルでわかりやすいです。
最初に1年半内に高値を更新した銘柄を買いに行くと書いてあり、「大丈夫?」と思いましたが、裏には四季報分析などで会社が成長すると確信を持ち、その上での投資であって、単純な高値追いを推奨している訳ではないです。
本の中ではスクリーニングの仕方、四季報を読む上でのポイント、実際に10倍株になった株のチャート、エントリーポイントなどが詳細に記されていて、読んでいてわくわくします。
ご注意
※ブログだけだと一部しか紹介は出来ていないのでご興味を持ちましたらぜひ本をご購入下さい。
日々の投資手法研究52 #米ドル #人民元
人民元、ドル覇権に一石 独自決済、89カ国・地域の865銀行に 米の制裁国取り込む :日本経済新聞
①人民元の国際化を狙う中国独自の国際決済システムが2015年10月の稼働後、銀行の参加が89カ国・地域の865行に広がっていることが日本経済新聞の調べでわかった
②現在の国際決済は、ベルギーに本部を置く国際銀行間通信協会(SWIFT)のシステムを通じて送金情報をやり取りするのが主流だ。その決済額は1日あたり5兆~6兆ドル(550兆~660兆円)とされ、事実上の国際標準になっている。うち4割がドル決済で、SWIFTがドル覇権を支えている状況
③経済制裁をアメリカから受けているロシアやイラン、一帯一路に参加するアフリカ諸国なども人民元決済を利用する
米制裁 ドル離れ招く ロシア・イラン、代替決済探る :日本経済新聞
①中国とロシアの取引では人民元を欲しがる中国零細企業も多い
②ロシアは18年に外貨準備で保有するドルを半分に減らしてユーロと人民元を組み入れている模様
③世界の資金決済における米ドルのシェアは4割、特に資源関連だと圧倒的
感想
この記事を活用して金融機関が金融商品を売り込むには好都合な印象を受けました。
しかし、乗っていいのか、比率はどうすればいいのかを考えてみます。
と同時に資産分散を行う上での比率の参考にもなると考えます。
まず、記事の見出しはドル離れが進んでおり、人民元が存在感を増しているとあり、これに関しては人民元による決済が2018年に410兆円規模に拡大していることから人民元が存在感を増していることは間違いないです。
一方で世界の資金決済の額が1日あたり550-660兆円で、うち4割が米ドルとも書いてあります。人民元の決済シェアは計算上約1.8%です。
米ドルの1/20程度です。
投資面から
金融機関の営業がこの記事のコピーを持参して「これからは人民元ですよ!」と言って中国系の投資信託を売り込む可能性もあります。が、金額については慎重にしたほうがいいです。
理由は簡単で、まだ海外での資金決済で世界の1.8%のシェアしか無い通貨なので国際社会での信用力がまだ未知数だからです。
金融資産の2%程度なら投資してもいいと思います。
一方で米ドルは40-50%程度投資しても良い通貨だと考えます、決済額で40%以上、株式の時価総額でも50%以上を占め、資産分散先として主力通貨になると考えます。
今後のドル覇権について
記事では今後米ドルの覇権が中国の影響力増大で脅かされる様な書き方でしたが、そうなるにはまだまだ時間がかかるし、果たして国際社会で人民元が広がるのかは不透明です。
理由は
①中国政府の意思で個人や企業の資産が没収されるリスクがある
中国の富裕層が日本含め海外で資産を爆買いしているのは事実ですが、背景には国家にいつ資産を没収されるかがわからない不安感が背景にあるとよく言われます。
社会主義国家で共産党1党独裁国家なので個人や企業の資産は国の意思でどうとでもなってしまいます。政治体制が変わらないと世界から信用されないと感じます。
②人民元の交換レートが中国政府の意思で決まる
米ドルや円、記事に出てきたトルコリラやロシアルーブル含め各国の為替レートは市場で自由に取引されてレートは市場によって決まります。
ただ、人民元は中国政府が日々為替介入を行い、対ドルでの交換レートは国家が管理しています。
となると、今後米国との貿易戦争が激化して人民元を大幅に切り下げる措置をとることも可能で、レートが国の恣意的に決まる通貨が本当に財産として保有し続けられるのかはとても疑問です。
中国は経済規模が世界2位の大国なのである程度人民元を保有すことにはなり、今後世界での利用が拡大はすると考えますが、ドルの覇権を脅かす存在になるとは考えにくいです。
現在人民元を輸出入で積極的に拡大しているロシアやトルコなどは米国からの制裁があるから仕方なく人民元で保有している現実もあると思われます。
結論
記事の見出しは大きく、1面記事なのでインパクトは強いですが、人民元をだからと言って今保有する必要はないです。
中国の株式や債券に投資する投資信託を売り込まれて持ってもいいですが、先に書いたように金融資産の2%程度が妥当です。1億円保有する人で200万円です。
やはり、資産を国家がいつでも没収できたり、レートをいつでも変更できる国が世界から信頼を受けないので現状では力づくで人民元利用を広げるでしょうが、限界はあると思います。
何より、中国自体が、人民元レートの為替介入の原資としても貿易での決済通貨としても米ドルを一番欲しがっている国ですから。
日々の投資手法研究51 #ソニー
日々の投資手法研究44でも紹介したソニーですが、新しいニュースです。
【ビジネスTODAY】ソニー成長へ クラウド補完:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO44968340X10C19A5TJ2000/
記事のポイント
②ソニーはゲームなどのコンテンツ提供、マイクロソフトはクラウドサービスを提供
③画像センサーや家電でもソニーが製品側を担当、マイクロソフトはAI側を担当
感想
以前ブログでソニー株の業績面を書いて
割安だけど上昇にはPEGの改善が必要で何か成長のきっかけが必要と書きました。
今回の提携はかなり大きいと感じます。
改めて業績面の確認です
四季報オンラインからです
2019.3予 売上8.7兆円、営業利益8700億円、一株利益662円
2020.3予 売上8.6兆円、営業利益8900億円、一株利益555円
一株利益が大幅に変動しているのはスポティファイの株式売却益の影響も大きいようです。
2020年は株式売却益は見込んでません。
2020年一株利益で見るとPERは10.6倍、営業利益成長率は2.2%、PEGは4.4倍です
PSRは約0.9倍です
単純にPERが日経平均並みの評価、約12倍になるだけで今より1割はあります
ただ、これでは沢山ある普通の上場会社並みです
今回の提携は記事には数字面では記述がないのでインパクトは少ないです
ただ、大きいのはマイクロソフトにデータを貯められるのでソニーとしてはユーザーに対してこれまで以上に大容量の映像やゲームサービスを提供できることやIoTの時代に入ると家電などの開発、提供、データ管理、サービスの提供などを最初から最後まで一貫して行える企業に変身できることです
最初からと言うのがとても大きなポイントで、アマゾンも、アップルもグーグルもメーカーでは無いのでユーザーの声を反映して製品を開発、製造は出来ません、あくまで委託業者に作らせるだけで、ソニーはこれが出来る企業です
マイクロソフトもわかっているから今回ソニーと提携したわけです
今後時間は多少かかるかもしれませんが、IoTの時代に入り、ユーザーに使いやすいソニー製の家電がマイクロソフトのクラウドでデータを貯め、スマホやゲームや映画も含め家庭の全てを提供して、これを毎月課金のサービスにするとなるとNetflix、アップルを合わせたサービスが提供出来る様になり、なおかつ彼らに無いゲームも提供出来ます
また、センサーやカメラの需要も膨大です
家庭だと留守番サービスや健康管理、見守りサービス、企業だと無人店舗などで必要です
マイクロソフトでデータを貯められるならソニーはアップルやグーグル、アマゾンに安く製品を提供する必要は無くなるので強気に出られます
今まで日本のメーカーは良い製品を作るのにデータ含めた儲けるシステムを持たないからアップル等に安く買い叩かれて利益が出ない状態が続いてました
これが逆転する可能性を感じる記事です
株価に反応するテーマは沢山あって、クラウド、サブスクリプション、IoT、5Gです
今まで評価が平均並みだったのは良い製品を収益に結びつける成長シナリオが無かっただけです
ソニーブランドの復活に期待したいです